house-Kamiosaki
東京都内の住宅です。
敷地は武蔵野台地の先端に位置し、低地にあたる谷が複雑に入り組んで舌状の丘を形づくるエリアにあります。
谷部分の最奥部に位置する敷地周囲は特に高低差が大きく、周囲を見上げるような擁壁や植栽に囲まれた「谷底」のような感覚と、眼下に広がる風景を見下ろす「丘」のような眺望が同居し、地形の凹凸を肌で感じることができます。
我々は、間口が狭く奥行が長い敷地に対して、接道面に植栽ポットを一層分立ち上げる提案を行いました。
常緑樹主体とすることで住宅内部へのプライバシー性を確保しつつ、室内からは庭として機能し、周囲に対しても豊かな緑を感じさせる柔らかいファサードを作ります。
樹々を見上げる植栽ポットの隙間を「谷」と見立てて住宅へのアプローチ動線とし、あえて高さを抑えRCの洗い出しの壁に囲まれたほの暗い印象の玄関へと入っていきます。
階段を上がった先には、目の前に緑が広がる「丘」の上を感じさせる明るく開放的な空間が待っています。
地形のダイナミズムを住宅に取り入れた、「谷」から「丘」へ至る住まいです。
かつて存在したであろう北髙南低の傾斜に沿うように、RCの腰壁を段状にレベルをずらしながら設け、その上に高さを揃えた門型の木造フレームを載せています。
一定の高さまでRCを立ち上げることで、眺望を遮る側に耐力壁を設けない計画が可能となっており、南北に抜けた開放的な空間を実現しています。
木のメインフレームの柱は角を面取りし、RCと木造の設置部の一部を窓として抜くことで、地形や擁壁を思わせるRCの構造体に対して、軽やかに木のフレームが載る計画となっています。
木架構があらわれた屋根は、サッシの規格サイズに合わせて三段にずらしながらかけ、屋根の隙間から奥行の深い建物に光を導き入れています。
周囲の地形と敷地の特性を精緻に読み解いた「谷」から「丘」へと続く空間の流れを通じて、土地に根差した感覚を持てる家を目指しました。
[構造計画]
地下1階および地上1階は壁式鉄筋コンクリート造、地上1階より上部はRC造と木造の混構造としています。
地上階では、南北方向に視線を妨げない開放的な架構が求められました。
そのため、桁行方向は外壁となるRC壁および木造耐力壁で水平力に抵抗し、梁間方向はRC立上りによる片持ち壁と木造ラーメン架構(一部耐力壁)によって水平力に抵抗する構成としています。
ラーメン架構を構成する部材はオウシュウアカマツ集成材を使用し、柱断面は105×240mm、梁は2-45×180mmおよび2-45×300mmのダブル梁とし、柱頭部を挟み込む形式としています。
ラーメン接合部にはL字型鋼製プレートを用い、柱両側面と各梁側面の間に6mm厚のL字型プレートを設け、これを介して柱—梁間の応力伝達を行います。ダブル梁および柱とL字型鋼製プレートとは、せん断ピンおよびボルトにより接合し、モーメント抵抗を可能としています。
ラーメン架構以外の横架材は45×180mm@455ピッチとし、45mm幅の材による繊細で均質な空間を目指しました。
(坂田涼太郎/坂田涼太郎構造設計事務所)
[環境計画]
極力エアコンに頼らない風通しのよい家を実現するために、空調計画と合わせて開閉可能な窓の位置についても設計初期から検討しました。
南面から吹いてくる風に対して、常緑樹主体の庭の蒸散効果で空気を冷やします。
テラスに面した南面の掃き出し窓と、日常的に開けておける高窓の二か所を開閉可能とし、北側のキッチンの窓と、上部の書斎の窓から空気を抜く計画としました。
冬季はLDKに床暖房を設置して居住域を温め、吹抜け上に溜まった暖気を循環ダクトによって地下の寝室に送ります。
三段の屋根とハイサイドライトは夏季の日射を遮る高さに設定し、冬季の光だけを室内に取り入れます。
過度に空調に頼らない計画とすることで、季節のうつりかわりや外部環境を五感で感じ取れる住まいを目指しました。
Site : 東京都
Year : 2025
Total floor area : 120㎡
Structure : RC+W
Structural design : 坂田涼太郎構造設計事務所
Facility design : Y.M.O合同会社
Contractor : 栄伸建設
Photo: (pic 5-16)Takumi Honma























