Tacta

hotel-Tottori dune

鳥取砂丘を目前に望む敷地で進行中の、既存民宿をホテルへと改修するプロジェクトです。

鉄骨造二階建ての既存建物は、道路に面して大きなガラス窓が連続する開放的な構えを持ちながら、ブレースが極端に少なく、耐震補強が不可欠な状態でした。
私たちは、その開放感を損なうことなく補強を行うために、建物の外側からバットレスのように柱へと寄り添うコンクリートの曲面壁を巡らせる構成としました。
曲面壁は単なる構造補強の装置ではなく、やわらかな砂丘の起伏を思わせるように段階的に高さを変えながら建物を包み込み、四方を砂に囲われた砂丘の景観を抽象的に再構成する「縮景」として機能します。

窓まわりは既存サッシのリズムに合わせて、波や砂紋を想起させる半円のモチーフで窓面を象り、曲面壁と植栽帯を重ね合わせることで、建物前面に広がる大きな道路や駐車場に対して複数の境界面を介して距離を取ります。
円形に折り曲げられた壁がゲストを奥に誘う、砂漠のオアシスに迷い込んだような穏やかな空間を目指しています。

客室には、砂丘を歩く感覚を喚起する砂紋モチーフのカーペットを敷き、砂が隆起したような角のない造形で家具を構成。黒いアーチ窓とターコイズブルーのファブリックは、鳥取の民藝「牛の戸焼き」の色彩を参照し、砂漠の邸宅のような非日常性と、鳥取とのつながりを感じさせる落ち着きを両立させています。

使われていなかった屋上は、新たにルーフトップラウンジとして再生しました。周囲の道路や駐車場など近景のノイズを低木の植栽で緩やかに遮り視線を導くことで、砂丘と日本海への眺望を楽しめる鳥取砂丘観光の新たな目的地となる場を作ります。

砂丘の際という、日本の中でも特異な環境に呼応し、「砂の中のオアシス」を思わせる、穏やかで包容力のある建築を構想しています。

On going

Site : 鳥取県

Year : 2025-

Total floor area : 300㎡

Structure : S+RC

Design partner : HARUKI OKU DESIGN

Structural design : ARSTR