hotel-D
東京都内で計画した一棟貸しのホテルです。
南北で10mの高低差をつなぐ、階段のある路地を前面道路とした角地で、計画地を起点に扇形に地形が下がっていく周辺環境でした。
路地は2項道路であることから、建替の際に個々の建物がセットバックしていくことで、段の踏面も幅も素材もバラバラな、雑多で魅力的な空間が生まれていました。その「東京ならではの風景」ともいえる路地の空間性を室内に引き込むことを目指しました。

自分の敷地と路地空間が混ざり合うように、路地の階段から連続するようにアプローチの階段を設け、隣地のブロック塀に誘われるように隙間から建物へ入ります。
内部は、コアとなる階段を囲んで半円を描くように滞在空間を配置。コンクリートの腰壁の高さを段階的に変化させることにより、ダイニングは高窓から隣家の植栽をのぞむ落ち着いたスペースとなり、リビング部分は路地に対して開けた、街並みと一体になる開放的な空間としました。
鉄筋コンクリート造と木造をハイブリッドさせ、路地の素材感に近い洗い出したコンクリートを表情を変えながら室内にも展開。リビングの屋根から上は木造として、路地が立ち上がったような立体空間に軽やかに木造が載る構成としています。
地下には、道路際の植栽と隣地のコンクリートブロック塀を借景として取り込む浴室を配置。
岩を露出させた斜面の庭を設けることで、地下でありながら外部と繋がり、敷地周囲とのつながりを作るレンガ塀によって、視線がコントロールされた豊かな浴室空間を実現しています。
上階には、街並みの屋根線が下がっていく、地形に呼応した都市の風景を借景として取り入れた茶室を設けました。勾配屋根には放射状の垂木をかけ、二面のミラーで垂木とトップライトを増幅させることで、一周垂木がまわるように見せています。路地を楽しむ人々の声をBGMとした、新しい「市中の山居」となる茶室を目指しました。
さらに、周囲の屋根よりも一段高いルーフトップを設け、周囲の地形の広がりを感じられる場としました。一段上げた小さなスペースには、東京タワーを遠望する一人だけの象徴的な場所を計画しています。
全体で80㎡の極小な建築ながら、多様な空間がそれぞれ周囲の建物や路地空間と呼応します。
路地や地形との関係を新たな視点で楽しむ、街並みに身をゆだねる建築を構想しました。
Unbuild
Site : 東京都
Year : 2025
Total floor area : 80㎡
Structure : RC+W
















