Tacta

大矢部みどりの公園 MEZAME VALLEY -コミュニティ拠点施設

 

「大矢部みどりの公園 MEZAME VALLEY」の公式ブランドサイトが公開されました。

https://mezamevalley.jp

MEZAME VALLEY 公式Instagram:
@mezamevalley

 
私たちTacta建築設計事務所は「大矢部オープンゲートプロジェクト」のJVの一員として、建築設計を担当しています。89年間開かれてこなかった大矢部弾庫跡地の持つ稀有な自然環境、三浦一族の歴史を最大限尊重し、2028年4月の開業を目指して設計を進めています。

 

 

歴史、自然、人をつなぐ、ウェルビーイング・プレイス
 

 神奈川県横須賀市の内陸側の中心にある大矢部エリアは、平安時代末期から鎌倉時代にかけて三浦一族の本拠地として栄えた地域です。公園整備の対象地内に位置する「円通寺跡」は平安時代末期に初代三浦家当主・三浦為道によって開基されたと伝えられています。さらに「円通寺」の奥には、横穴式の納骨窟である「深谷やぐら郡」が存在し、弾薬庫として使われるまでは為道公や、三代当主義継公が安置されていました。これらは、三浦半島、三浦一族の隆盛を語る上で非常に重要な歴史遺産です。

 

公園整備の対象地である大矢部弾庫跡地は、国有地かつ弾庫跡地という特性から長年にわたり開発を免れ、宅地に囲まれながらも89年間ほとんど人が立ち入ることのなかった、稀有な自然環境を有しています。

 

今回、横須賀市が対象地を取得し、Park-PFI制度、DB制度、指定管理者制度を活用することにより、「大矢部みどりの公園」として整備する公園整備・運営プロポーザルが実施され、株式会社日比谷花壇を代表企業とした「大矢部オープンゲートプロジェクト」が設置等予定者として選定されました。

 

公園の機能として、4000㎡の芝生広場や子どものための広場、日常時は休憩場所やイベントが開催される大屋根など賑わいをもたらす公園機能が求められる一方で、豊かな緑の中で心身を整えるマインドフルネス施設の設置や、三浦一族の歴史を感じ史跡を保護していくことも重視されていました。

 

我々は長く閉ざされてきたことで守られてきた環境や土地の記憶を活かし、「人と人」「人と自然」「人と歴史」を結ぶ、ウェルビーイングな体験の場として、地域に開かれた新しい公園像を提案しました。

  

株式会社Tacta建築設計事務所は、プロジェクトの構成企業として公募時点から参画し、歴史や自然が残る対象地に対して、設計統括を務める株式会社ランドスケープデザインと協働し、園全体の配置計画や建築設計(休憩や歴史展示・飲食機能を持つコミュニティ施設、防災拠点となる大屋根)を担当しています。

 

 

歴史性を強調する公園計画と建物配置

 

本計画では、長年人が立ち入っていない稀有な自然環境、谷戸の浸食が生み出した「土」の字に似た特徴的な平場の形状、そして三浦一族の歴史を最大限に尊重し、それらをいかに後世へ継承していくかを重視して配置と設計を進めました。

 

複数の谷筋が合流して平場をつくる敷地南側からは、最奥の斜面地に残る三浦一族の遺構へと視線が一直線に抜けます。そこには、歴史的背景を知らずとも「何かがある」と感じさせる静謐な気配が漂っています。かつてこの地が海に近く、三浦一族拠点や陵墓に選ばれた理由が自然と理解できる環境であり、公園整備においてその象徴性を損なうことはあってはならないと考えました。

 

そこで、やぐら群から手前の広場までを貫く一本の「歴史の軸線」を計画の中心に据え、それを包み込むように東西に建物を配置することで、用途や賑わいの異なるエリアを緩やかに分節する計画としました。休憩スペース、歴史展示、レストランや物販等から成るコミュニティ施設は、左右から迫る丘の等高線を延長したような、八の字型を描く建築としました。機能を公園の中心部に集約することで、初めての来園者にも明快な動線を確保しています。

 

建物は同一架構の連続によりコストを抑えつつ、機能に応じてボリュームを少しずつずらし、端部を半円形にすることでシンプルかつ柔らかな表情を作りました。切妻屋根の軒先を低く抑えて周囲の自然に馴染ませる一方、中央の歴史の軸線を両側から包み込む配置が、この地の歴史性を穏やかに際立たせています。構造面では方杖を用いることで両サイドに柱を落とさず、2m以上の深い軒を実現しました。風が通り抜ける軒下にはベンチを多く設け、広大な公園内の自然との一体感を心地よく享受できる屋外空間を創出しています。

 

また、建物奥のエリアには来園者とともに育てる田畑を配置し、その周囲を回遊する動線を計画しました。これは「生きる力を育む」という公園のコンセプトを体現すると同時に、神社の参道のように動線を中心軸から外すことで、背後に鎮座する遺構への敬意をより深く感じられる構成としています。

 

この地を訪れる方々に、賑わいや農の体験と同時に、受け継がれてきた歴史への畏怖も想起させることで、自然と歴史への関心が深まる公園づくりを目指しています。土地や地域に想いを寄せる人が増えることこそが、20年という事業期間を超え、この場所の現在の姿を未来へ残していくことにつながると考えています。

 

Site : 神奈川県

Year : 2025–

Total floor area : 700㎡

Structure : W

構造設計:坂田涼太郎構造設計事務所

設備設計:明野設備研究所


 

【大矢部オープンゲートプロジェクト】

代表企業、事業者 : 株式会社日比谷花壇

指定管理業務 : 京急サービス株式会社 京浜急行電鉄株式会社

設計統括、外構設計 : 株式会社ランドスケープデザイン

建築設計:株式会社Tacta建築設計事務所

測量設計 : 有限会社三浦建築測量

工事統轄、土木工事 : 株式会社丸孝産業

建築工事 : 株式会社大神

 

【協力企業】

企画プロデュース:dot button company株式会社 

農・環境コンテンツ監修:株式会社苗目

歴史監修:山城ガール むつみ 

VI・サイン・展示・グラフィックデザイン:AFFORDANCE inc.

テナント誘致・プロデュース:FARMER YOU INC.

※敬称略